時を止めた赤レンガの丘、中林洞(チュンニムドン)への誘い ✨
ソウル駅の喧騒からほんの少し離れた場所に、まるで時間が止まったかのような静寂な丘があります。中林洞(チュンニムドン)。そこには、130年もの間、人々の祈りを見守り続けてきた『薬峴聖堂(ヤッキョンソンダン)』が佇んでいます。HanakoやCasa BRUTUSが愛してやまない、新旧が共存するソウルの深層部を、エディターKがご案内します。

この丘の上にある聖堂は、1892年に完工した韓国初の西洋式レンガ造り聖堂です。ソウルで最も有名な明洞聖堂よりも6年早く建てられました。実際にその場に立つと、赤レンガの温もりと、高くそびえる尖塔が青空に映える姿に、思わず息を呑みます。聖堂の名前は、かつてこの場所に薬草が多かったことから『薬峴(ヤッヒョン)』と呼ばれたことに由来します。
建築美の極致。ロマネスクとゴシックが交差する空間 📸
建築としての美しさも格別です。当時の技術や予算の制約から、ロマネスク様式とゴシック様式を折衷した簡素な造りとなっていますが、そのシンプルさがかえって気高い品格を感じさせます。


正面に回ると、重厚な木の扉と円窓、そして天に向かって伸びる尖塔が、訪れる者を優しく迎え入れてくれます。側面から眺めれば、アーチ型の窓が規則正しく並び、レンガの質感に宿る手仕事の跡が、100年以上の歳月を肌で感じさせてくれます。入口の案内板には、この地の歴史が詳しく刻まれており、かつての苦難と美学が語りかけてくるようです。

季節の光が描く、一期一会の風景 ✨
私が訪れた時は、まだ木々の枝が繊細なシルエットを描く季節でしたが、その隙間から差し込む柔らかい陽光が、聖堂の壁面を黄金色に染めていました。建物そのものが光のキャンバスのように見え、自然と建築が溶け合う美しさに驚かされました。


見上げるような角度から尖塔を眺めると、冬の名残を感じさせる木々の枝が、まるで複雑なレース模様のように空を縁取っています。聖堂の敷地内には、イエス・キリストの受難を描いた14のレリーフが並ぶ『十字架の道』もあり、静かに自分を見つめ直す散策に最適です。

聖堂の足元に広がる、韓国近現代史の断片 🚩
薬峴聖堂の魅力は聖堂そのものだけではありません。丘を降りると、1970年に建てられた韓国初の住商複合アパート『聖ヨセフ・アパート』が、坂道に沿って緩やかなカーブを描きながら佇んでいます。そのさらに先には、1900年代初頭にカナダ人建築家ヘンリー・ゴードンによって設計された洋館『忠正閣(チュンジョンガッ)』があり、現在はイタリアンレストランとして、当時の面影を今に伝えています。

薬峴聖堂(ヤッキョンソンダン)への行き方は?
地下鉄2号線・5号線の『忠正路(チュンジョンノ)駅』4番出口から徒歩約5〜7分、またはソウル駅から徒歩でアクセス可能です。幹線道路沿いにある小さな入口を見逃さないよう注意してください。坂道を少し登るだけで、都会のノイズが消え、別世界が広がります。
訪れる際のおすすめの時間帯とマナーは?
最も美しいのは、日光が斜めに差し込む午前中です。建物内部はステンドグラスから差し込む光が非常に幻想的ですが、現在、ミサや結婚式などの行事以外は、一般観光客の内部見学を制限している場合があります。静寂を楽しみ、祈りを捧げる方々への配慮を忘れずに、外観や庭園の美しさを存分に味わってください。
ソウルの中心部でありながら、これほどまでに深い歴史と情緒を湛えた場所は他にありません。次のソウル旅では、ショッピングだけでなく、中林洞の路地裏で『歴史の呼吸』を感じてみてはいかがでしょうか。